2012年もいよいよ最後の日となりました。今年の10大国際ニュースをあげるとしたら、尖閣諸島国有化とその後の中国における反日デモをあげる人も多いのではないかと思います。
当の中国では、国営通信社、新華社が選んだ今年の10大国際ニュースのトップとして、米国が国防戦略をアジアにシフトしたことをあげています。オバマ大統領は、1月5日に、新国防戦略「全世界における米国のリーダシップの堅持-21世紀の国防戦略の優先事項(Sustaining U.S. Global I Leadership: Priorities for 21st Century Defense)」を発表し、6月2日には、シンガポールで開かれていたアジア安全保障会議で、パネッタ国防長官が、アジア太平洋地域での米軍のプレゼンス拡大のため、太平洋と大西洋にほぼ50対50の割合で展開する米海軍艦船の割合を、2020年までに60対40に変更する方針を示しました。
米国のこうした一連の方針は、実は今年に入って新しく出されたものではありません。2011年11月にオバマ大統領が豪州を訪問した際に、ギラード首相との会談で、豪州北部のダーウィンの空軍基地に新たに米海兵隊を駐留させることで合意し、その翌日には、キャンベラの豪州連邦議会において、今後の安保政策でアジア太平洋地域を最優先すると宣言しており、その延長線上にあるものです。
それでも敢えて中国の国営通信社がこのニュースをトップに選んだのは、米国の国防戦略が彼らにとっていかに重要であるかを物語っています。それに比べれば、尖閣問題などは、彼らにとってはちっぽけで些細な問題でしかないのでしょう。この10大ニュースの1~10というのは、時系列に沿ってあげているだけであり、順位ではないそうです。ちなみに尖閣問題は9月に起こった事件として6番目に入っていますが、ことの発端になった石原知事の地権者からの購入方針発表日である4月16日まで遡れば、4番目にもってくることも可能であり、さらに石垣市議ら4人が上陸した1月3日まで遡れば、トップにもってくることもできます。
中国に進出中の日本企業は、今年の中国での反日デモに大きく振り回され、巨額の損失を被りました。中国から日本への観光客も激減しています。また、中国からの撤退を検討し、東南アジアやインドなどへ拠点を移そうとしている日本の会社も増えているようです。中国での人件費の高騰も、その動きに拍車をかけています。中国は、その賃金の安さから世界の工場として長い間君臨してきましたが、中国政府は、さらに国際的な競争力をつけるため、付加価値の高い製品の生産と輸出へと経済をシフトさせる方針でいます。賃金が上がったということは、中国人がより豊かになり、市場としての魅力が増していくことも意味します。言い換えれば、世界経済における中国の存在価値が大きく変わろうとしているのです。
2012年は、日米中の3国の力のバランスが大きく変わった年といえるのではないでしょうか。この流れはもう変えることできません。その事実を冷静に受けとめ、米国と中国という2つのスーパーパワーとの今後のつきあい方を考えていく必要があります。これを危機ととらえるのか、逆にチャンスととらえるかによって、日本の未来は大きく変わっていくのではないでしょうか。
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